異世界で家庭菜園やってみた
どのくらい走ったのか分からない。
息が切れ、足ももう動かない。そんな頃になって、ようやく悠里は走るのをやめた。
そこは王宮の中の小高い丘のような所で、低木ばかりの藪に覆われていた。
悠里はその藪に身を潜めるようにして座った。
低木は悠里を隠すように枝を伸ばしていた。
「迷子になっちゃったなあ」
そのことに多少の不安はあったけれど、それでも久しぶりに一人になれたことに、ほっとしている自分もいた。
この国の季節は冬。
けれど、低木は常緑なのか、葉が生い茂っている。
比較的暖かいのも、この国の冬の特徴か。
アシュラムに聞いたことを思い出して、悠里は溜め息をついた。
あんなふうにアシュラムを責めるつもりは全くなかったのに。
つい口をついて出た言葉は、彼を攻撃する物だった。
「 ああ、もう。何やってるんだろう。わたし」
悠里はそう言うと、髪の毛をぐちゃぐちゃ掻き回して、最後には頭を抱えてしまった。
「いろいろ溜まってたんだよ。きっと……」
元の世界にいた時から溜まっていた鬱憤ごと、アシュラムにぶつけてしまったのだ。
「情けないのは、わたしの方だ……」
きっと悠里は、アシュラムの孤独に自分のそれを重ねてしまい、居たたまれなくなってしまったのだ。
けれど、悠里とアシュラムでは立場が違う。
少なくとも悠里は両親と一つ屋根の下で暮らして来た。
彼らの目が自分に向いていないと思い込んでいるのも、恐らく彼女の我が儘なのだ。
けれど、アシュラムは親許を離れ、身分まで変えて、神殿という薄暗い場所で育った。
そこで、彼が親の愛を求めても無理からぬ事だ。
二人の立場は、決定的に違う。
(それなのに、わたしは彼の人生を否定してしまったんだ)
はあと長い溜め息をついて、悠里はこれからどうするべきか考え始めた。
アシュラムにはもうちょっと、きちんと謝ろう。
それから?
それから、彼の思いを冷静に聞いてあげよう。
そして?
そして、自分の思いも、ちゃんと彼に伝えよう。
本当なら、さっきの四阿で出来たことを、自分で台無しにしてしまったのだ。
悠里はもう二度と、ちゃんと考えていることを伝えないまま、誰かと疎遠になるのは嫌だった。
悠里はしばらく、藪の下から空を眺めていた。
日本のものとは違う、どこかくすんだような色の青空。それでも、太陽の光は暖かく降り注いでいた。
「あの太陽は、わたしの知ってる太陽と同じなのかな」
そんな事はないだろうと思いながら、そう呟いた。
「遠いんだろうなあ。地球から……」
今頃日本では、悠里がいなくなって大騒ぎしているだろうか。
それとも、時間の流れが違っていて、あの、鍬を畑に突き刺した場面から、大して時間は経っていないのかもしれない。
いずれにせよ、家族はそのうち悠里の捜索願いを出すだろう。
「はあ。どうなっちゃうんだろうなあ」
とにかく、アシュラムともう一度話そう。立ち上がると、丘を下り始めた。
いくら一人になれたと喜んでも、こんなに心が千々に乱れている時に一人で居るのは逆効果だ。
完全に思考が後ろ向きになってしまうからだ。
だから悠里は丘を下る。
きちんと謝って、もっと建設的に話を進めてみよう。
息が切れ、足ももう動かない。そんな頃になって、ようやく悠里は走るのをやめた。
そこは王宮の中の小高い丘のような所で、低木ばかりの藪に覆われていた。
悠里はその藪に身を潜めるようにして座った。
低木は悠里を隠すように枝を伸ばしていた。
「迷子になっちゃったなあ」
そのことに多少の不安はあったけれど、それでも久しぶりに一人になれたことに、ほっとしている自分もいた。
この国の季節は冬。
けれど、低木は常緑なのか、葉が生い茂っている。
比較的暖かいのも、この国の冬の特徴か。
アシュラムに聞いたことを思い出して、悠里は溜め息をついた。
あんなふうにアシュラムを責めるつもりは全くなかったのに。
つい口をついて出た言葉は、彼を攻撃する物だった。
「 ああ、もう。何やってるんだろう。わたし」
悠里はそう言うと、髪の毛をぐちゃぐちゃ掻き回して、最後には頭を抱えてしまった。
「いろいろ溜まってたんだよ。きっと……」
元の世界にいた時から溜まっていた鬱憤ごと、アシュラムにぶつけてしまったのだ。
「情けないのは、わたしの方だ……」
きっと悠里は、アシュラムの孤独に自分のそれを重ねてしまい、居たたまれなくなってしまったのだ。
けれど、悠里とアシュラムでは立場が違う。
少なくとも悠里は両親と一つ屋根の下で暮らして来た。
彼らの目が自分に向いていないと思い込んでいるのも、恐らく彼女の我が儘なのだ。
けれど、アシュラムは親許を離れ、身分まで変えて、神殿という薄暗い場所で育った。
そこで、彼が親の愛を求めても無理からぬ事だ。
二人の立場は、決定的に違う。
(それなのに、わたしは彼の人生を否定してしまったんだ)
はあと長い溜め息をついて、悠里はこれからどうするべきか考え始めた。
アシュラムにはもうちょっと、きちんと謝ろう。
それから?
それから、彼の思いを冷静に聞いてあげよう。
そして?
そして、自分の思いも、ちゃんと彼に伝えよう。
本当なら、さっきの四阿で出来たことを、自分で台無しにしてしまったのだ。
悠里はもう二度と、ちゃんと考えていることを伝えないまま、誰かと疎遠になるのは嫌だった。
悠里はしばらく、藪の下から空を眺めていた。
日本のものとは違う、どこかくすんだような色の青空。それでも、太陽の光は暖かく降り注いでいた。
「あの太陽は、わたしの知ってる太陽と同じなのかな」
そんな事はないだろうと思いながら、そう呟いた。
「遠いんだろうなあ。地球から……」
今頃日本では、悠里がいなくなって大騒ぎしているだろうか。
それとも、時間の流れが違っていて、あの、鍬を畑に突き刺した場面から、大して時間は経っていないのかもしれない。
いずれにせよ、家族はそのうち悠里の捜索願いを出すだろう。
「はあ。どうなっちゃうんだろうなあ」
とにかく、アシュラムともう一度話そう。立ち上がると、丘を下り始めた。
いくら一人になれたと喜んでも、こんなに心が千々に乱れている時に一人で居るのは逆効果だ。
完全に思考が後ろ向きになってしまうからだ。
だから悠里は丘を下る。
きちんと謝って、もっと建設的に話を進めてみよう。