異世界で家庭菜園やってみた
3.最初のステップ
「鍬!!鍬!!」と言い募る悠里に、コウメさまは溜め息をつくと、申し訳なさそうにこう言った。
「残念だけど、ここに鍬はないわ」
その言葉に悠里は目を瞠った。
「鍬が……ない……?」
じゃあ、どうやって土を?
「木の棒でね、こう、掘り起こすのよ」
なんて、非採算的!
悠里は驚きを通り越して、その労働に敬意まで覚えた。
「じゃあ、わたし、鍬を作ります!」
確かな決意を持ってそう言った悠里に、コウメさまは「あら、いいわね」と軽く応じた。
「この程度の畑で鍬までって思っていたのだけれど、やっぱり、あれば便利よねえ。じゃあ、お願いできるかしら?」
「はい。素材はやっぱり鉄ですか?」
「鉄……ねえ。ねえ、ユーリ。一人では何かと限界があるわ。一人、いい子を紹介してあげましょう」
良い事を思い付いたとばかりに、コウメさまはにっこりとして、そう言った。
「いい子……ですか?」
疑いの眼差しを向ける悠里に、コウメさまはそれでも笑顔を崩さない。
悠里は出来れば一人で畑をしたい。
そう思っていたから、彼女にとってコウメさまの提案は、あまりいいものとは言えなかったのだ。
「ええ、そう。とってもいい子よ」
ふふふと笑いを止められない感じのコウメさまは、何だかとってもノリノリだった。
(同じくらいの年なのに、うちのお祖母ちゃんのがお祖母ちゃんらしいな……)
悠里がそっと息を吐いたことなどコウメさまは知る由もなく、またまたどこに隠れていたのかと思うような侍女に、「ウリエルを呼んで」と言いつけている。
次女を見送ると、「ユーリはここを使うといいわ」とコウメさまの畑の横を指差した。
そこはまだ、薄い色の土が剥き出しになっている、何も生えていない場所だった。
「はい。ありがとうございます……」
「この痩せた土に、何を植える?」
「え、えっと……」
痩せた土地にすぐ植えるとすれば、イモ類だろう。
だが、イモはもう少し温かくなってからの方がいい。
だとすれば、地道に土作りをしていてもいいかもしれない。
悠里は頭の中で、祖母から聞きかじった畑作知識を総動員して考えた。
正直、悠里は土作りから始めるなど初めてだった。
それは、祖母がやってくれていたから。
「さあ、種を撒けますよ。苗を植えなさいよ」という状態になってから、悠里は手を出していた。
だから、基礎的な知識はあまりないのだ。
野菜は植えて、水をやっていれば、大抵実る。
存外自分は簡単なことしかやっていなかったのだと、悠里は改めて気付かされていた。
「えっと……石灰、撒きますかね。とりあえず」
「そうね。でも、あいにく今石灰がうちになくて。市場に行けばあるかしらね。今からくるウリエルに連れて行ってもらいなさいな」
「い、いえ。場所さえ教えて貰えれば、一人で」
「無理よ」
一人で行くと言い掛けたところを、バッサリ切られてしまった。
「石灰なんて重いもの、あなたが一人で持てる筈ないでしょう。一人で出来ない時は、誰かを頼ればいいって、わたくし言わなかったかしら?」
コウメさまには逆らえない。
祖母と重ねてしまうからか、コウメさま自身の強さなのか、悠里は完全にコウメさまの掌の上だった。
「残念だけど、ここに鍬はないわ」
その言葉に悠里は目を瞠った。
「鍬が……ない……?」
じゃあ、どうやって土を?
「木の棒でね、こう、掘り起こすのよ」
なんて、非採算的!
悠里は驚きを通り越して、その労働に敬意まで覚えた。
「じゃあ、わたし、鍬を作ります!」
確かな決意を持ってそう言った悠里に、コウメさまは「あら、いいわね」と軽く応じた。
「この程度の畑で鍬までって思っていたのだけれど、やっぱり、あれば便利よねえ。じゃあ、お願いできるかしら?」
「はい。素材はやっぱり鉄ですか?」
「鉄……ねえ。ねえ、ユーリ。一人では何かと限界があるわ。一人、いい子を紹介してあげましょう」
良い事を思い付いたとばかりに、コウメさまはにっこりとして、そう言った。
「いい子……ですか?」
疑いの眼差しを向ける悠里に、コウメさまはそれでも笑顔を崩さない。
悠里は出来れば一人で畑をしたい。
そう思っていたから、彼女にとってコウメさまの提案は、あまりいいものとは言えなかったのだ。
「ええ、そう。とってもいい子よ」
ふふふと笑いを止められない感じのコウメさまは、何だかとってもノリノリだった。
(同じくらいの年なのに、うちのお祖母ちゃんのがお祖母ちゃんらしいな……)
悠里がそっと息を吐いたことなどコウメさまは知る由もなく、またまたどこに隠れていたのかと思うような侍女に、「ウリエルを呼んで」と言いつけている。
次女を見送ると、「ユーリはここを使うといいわ」とコウメさまの畑の横を指差した。
そこはまだ、薄い色の土が剥き出しになっている、何も生えていない場所だった。
「はい。ありがとうございます……」
「この痩せた土に、何を植える?」
「え、えっと……」
痩せた土地にすぐ植えるとすれば、イモ類だろう。
だが、イモはもう少し温かくなってからの方がいい。
だとすれば、地道に土作りをしていてもいいかもしれない。
悠里は頭の中で、祖母から聞きかじった畑作知識を総動員して考えた。
正直、悠里は土作りから始めるなど初めてだった。
それは、祖母がやってくれていたから。
「さあ、種を撒けますよ。苗を植えなさいよ」という状態になってから、悠里は手を出していた。
だから、基礎的な知識はあまりないのだ。
野菜は植えて、水をやっていれば、大抵実る。
存外自分は簡単なことしかやっていなかったのだと、悠里は改めて気付かされていた。
「えっと……石灰、撒きますかね。とりあえず」
「そうね。でも、あいにく今石灰がうちになくて。市場に行けばあるかしらね。今からくるウリエルに連れて行ってもらいなさいな」
「い、いえ。場所さえ教えて貰えれば、一人で」
「無理よ」
一人で行くと言い掛けたところを、バッサリ切られてしまった。
「石灰なんて重いもの、あなたが一人で持てる筈ないでしょう。一人で出来ない時は、誰かを頼ればいいって、わたくし言わなかったかしら?」
コウメさまには逆らえない。
祖母と重ねてしまうからか、コウメさま自身の強さなのか、悠里は完全にコウメさまの掌の上だった。