異世界で家庭菜園やってみた
アシュラムの事を気にしながら、悠里達はひとまずコウメさまの邸に戻り、居間に入ると作戦会議を開いた。

好奇心丸出しで参加したコウメさまは、外務部での出来事を聞くと、
「まあ。サベイルったら、相変わらず頭の固いことね」
と、ここにはいない外務卿の文句を言った。

「まあまあ、お祖母さま。外務卿には外務卿の立場がありますから」

ウリエルがとりなしても、「いいえ。もう少し融通が利かないと、国政だってうまくいきませんよ」と余程息子の対応にご不満らしい。

「融通と言っても、国と国の問題ではそう簡単にいきませんから」

「あら。ウリエルはわたくしとサベイル、どちらの味方なの?」

コウメさまは、細く整えた眉を吊り上げた。

「いや、お祖母さま……。そう言うことではなくてですね……」

「あなたをここまで立派に育てたわたくしよりも、あの朴念仁(ぼくねんじん)の味方をするの!?」

「お祖母さま……」

朴念仁て。

悠里は吹き出しそうになりながら、祖母と孫のじゃれ合いを傍観していた。

その後もしばらくコウメさまの「どちらの味方?」攻撃を受けたウリエルは、ほとほと弱り果てた様子で、ついに悠里に助けを求める視線を向けてきた。。

(ええ。もう少し見てたいんだけどな~)

そうは思ったが、このままでは話が進まないのも確かだったから、悠里は助け船を出すことにした。

「コウメさま。ウリエルさんはお祖母さまが大好きだって、いつも言ってますよ。俺はお祖母さまの味方だって」

「あら。そうなの?」

心なし顔を赤らめるウリエルを、満面の笑みで見返すコウメさま。

そこには孫の事が可愛くて仕方ないという気持ちが溢れている。

ふと自分の祖母のことを思い出しそうになって、悠里は気付かれないようにかぶりを振った。

「では、よろしいですか?話を戻しても」

「ええ。よくってよ。あの朴念仁にはいつか仕返ししてやりましょう」

物騒なことを言うコウメさまのことは敢えて無視して、ウリエルは『クワ』についての考えを話し始めた。

「鉄製品は国として輸入するのが難しいと言うだけで、個人的に仕入れに行くなら問題ないんじゃないかと思うんだ。現に、市場には鉄製の農機具があったからね。けれど、そうなってくると、競争も激しくなるし、金銭的にも厳しくなるだろう。問題は山積しているが、一つ一つ解決していくしかないだろうな」

「じゃあ、今すぐに仕入れに行くっていうのも難しいんですか?」

「交渉次第だろう。けれど鉄製品を仕入れているのは農機具屋だけではない。刀剣類を扱う店も調理器具を扱う店も、その他にも鉄製品を扱う店は多いだろう。それらが全てリュール王国の鉄を必要としているんだ」

「金銭的には、わたくしが何とかしてあげましょう?」

「え、コウメさまが?」

「ええ。これでも、この世界で長生きしているんですよ。機織りの収入だけではなくて、大公殿下の遺産であるとか、まあ、諸々ございますの」

「……」
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