異世界で家庭菜園やってみた
4.鍬を求めて
「これが越境許可の手形。これが滞在許可の手形。これが国内を歩き回ってもいいと言う許可の手形。これらは全部、常に肌身離さず持っていること。紛失したら、再発行の手続きがややこしい上に、不法侵入の疑いで当局に拘束されるから」
「ひえっ」
「それだけ、他国からの入国には厳しいと言うことだよ。万が一鉄鉱石を盗まれたりしたら、国にとって大損だからね」
「そう、ですよね……」
今さらながら、リュール王国という国が、如何に鉄を重要視しているかが分かってしまった。
リュール王国に行けば、案外簡単に鍬が手に入るような気がしていたが、事はそう容易ではないのかもしれない。
悠里はやはり考え方が甘いのだ。
「準備はもう出来てるね?」
「は、はい!」
「うん。じゃあ、明日の早朝出発するから、今夜は早めに寝ること」
「はい!」
ウリエルが全て手配してくれ、旅費はコウメさまが。
(わたし、何もしてないじゃん)
情けなくなってくるが、仕方ない。
悠里にはウリエルのような能力も、コウメさまのような財力もないのだから。
ウリエルから渡された手形を用意しておいた鞄にしまいながら、悠里はウリエルに「全部やってもらって、ごめんなさい」と謝った。
手形が発行されるまでの2週間。
彼が旅程を組み、上司と掛け合い、宿の手配や荷物の準備まで全て取り仕切ってくれたのだ。
悠里がしたことと言えば、自分の荷物を旅行鞄に詰めたことくらいだ。
そう言うと、ウリエルは肩をすくめた。
「だって、ユーリは知らないじゃないか。手続きの仕方も、旅行の仕方も」
「それは、そうですけど……」
「もしも、俺が日本に召喚されたとする」
「え?」
「もしもの話だよ。そこで、ユーリと旅行することになって、手続きしなければならない。でも、俺は日本での手続きの仕方とか何にも知らないから、ユーリが全部やってくれるんだ。旅行中の案内とかも全部ね。そのことを不甲斐なく思った俺は、ユーリに謝りまくる。俺が旅行中にユーリに言った言葉は「ごめん」だけ。そんなのユーリだって、困るだろ?」
「あ……」
「それと同じだよ。俺は知ってるからやってるだけ。ユーリが申し訳なく思う必要はないし、もっと甘えてくれてもいいくらいだ」
「……ありがとう」
そう素直にお礼を言うと、ウリエルは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、俺も明日の用意をしようかな。おやすみ。ユーリ」
「おやすみなさい」
パタリと扉が閉められた。
(また、ウリエルさんに見破られちゃったな)
自分はダメだと、すぐに卑屈になってしまう心を。
けれど、ウリエルはそのことを責めるのではなく、違う考え方もあるのだということを教えてくれる。
今までそんな人は周りにいなかった。
(ウリエルさんて、ほんとにいい人なんだな~)
ベッドに横になりながら、悠里は明日からのリュール王国への旅のことを思って、なかなか寝付かれないのだった。
「ひえっ」
「それだけ、他国からの入国には厳しいと言うことだよ。万が一鉄鉱石を盗まれたりしたら、国にとって大損だからね」
「そう、ですよね……」
今さらながら、リュール王国という国が、如何に鉄を重要視しているかが分かってしまった。
リュール王国に行けば、案外簡単に鍬が手に入るような気がしていたが、事はそう容易ではないのかもしれない。
悠里はやはり考え方が甘いのだ。
「準備はもう出来てるね?」
「は、はい!」
「うん。じゃあ、明日の早朝出発するから、今夜は早めに寝ること」
「はい!」
ウリエルが全て手配してくれ、旅費はコウメさまが。
(わたし、何もしてないじゃん)
情けなくなってくるが、仕方ない。
悠里にはウリエルのような能力も、コウメさまのような財力もないのだから。
ウリエルから渡された手形を用意しておいた鞄にしまいながら、悠里はウリエルに「全部やってもらって、ごめんなさい」と謝った。
手形が発行されるまでの2週間。
彼が旅程を組み、上司と掛け合い、宿の手配や荷物の準備まで全て取り仕切ってくれたのだ。
悠里がしたことと言えば、自分の荷物を旅行鞄に詰めたことくらいだ。
そう言うと、ウリエルは肩をすくめた。
「だって、ユーリは知らないじゃないか。手続きの仕方も、旅行の仕方も」
「それは、そうですけど……」
「もしも、俺が日本に召喚されたとする」
「え?」
「もしもの話だよ。そこで、ユーリと旅行することになって、手続きしなければならない。でも、俺は日本での手続きの仕方とか何にも知らないから、ユーリが全部やってくれるんだ。旅行中の案内とかも全部ね。そのことを不甲斐なく思った俺は、ユーリに謝りまくる。俺が旅行中にユーリに言った言葉は「ごめん」だけ。そんなのユーリだって、困るだろ?」
「あ……」
「それと同じだよ。俺は知ってるからやってるだけ。ユーリが申し訳なく思う必要はないし、もっと甘えてくれてもいいくらいだ」
「……ありがとう」
そう素直にお礼を言うと、ウリエルは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、俺も明日の用意をしようかな。おやすみ。ユーリ」
「おやすみなさい」
パタリと扉が閉められた。
(また、ウリエルさんに見破られちゃったな)
自分はダメだと、すぐに卑屈になってしまう心を。
けれど、ウリエルはそのことを責めるのではなく、違う考え方もあるのだということを教えてくれる。
今までそんな人は周りにいなかった。
(ウリエルさんて、ほんとにいい人なんだな~)
ベッドに横になりながら、悠里は明日からのリュール王国への旅のことを思って、なかなか寝付かれないのだった。