異世界で家庭菜園やってみた
自分も部屋に入ったウリエルは、きっちりとした上着を脱ぎ捨て深い溜め息をついた。

それから目に付いた果実酒をグラスに注ぎ、一気に飲み干すと、安楽椅子に身を投げ出した。

「馬鹿だな。俺も……」

目が合った瞬間に逸らされた目。

悠里の彼を拒否するような横顔が目に焼き付いて離れない。

どこかで抑えが利かなくなってしまったのだ。

気まずくなるから自制していたのに。

それが出来なくなるほど、自分は悠里に惹かれているのだろうか。

彼女が一歩引く度に、自分は一歩踏み込んでしまう。

そうしている内に、とうとう彼女の額に口付けを落としてしまった。

「あ~~」

呻くような声を上げて、ウリエルは頭を抱えた。

「早過ぎるって……」

自分を責めても、起こってしまったことは、もう戻せない。

恋人の振りをする。

それがぎりぎりのラインであった筈なのに。

もっと先を求めてしまう自分は、そんなにも我慢の利かない男だっただろうか?

自問するが答えは出ない。

二人きりの旅をすると決めた時から分かっていたのに。

悠里を求めてはだめだと。

何度も自分を諌めたのに。

それでも、彼女を側に感じた途端、彼女に触れたくなるのをどうすることも出来なかった。

「自信ねえな。俺……」

ウリエルの苦悶の時は、この先もまだまだ続くのだ……。



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