異世界で家庭菜園やってみた
うっとり見つめていると、ふと公爵が視線を上げ、悠里を見た。

「ひえっ」

思わず声を上げると、ウリエルが「どうした?」と顔を向けた。

ランカジャー夫人も面白そうに目を細めながら悠里を見ている。

「い、いえ。何でもありません。すみません」

まさか「公爵さまを見つめてました」とも言えずに頭を下げると、公爵がくっと笑うのが聞こえた。

「え?」

顔を上げた悠里を、公爵は見ている。

「私を見ていただろう?穴のあくほど」

そう言って、公爵は意地悪そうに微笑んだ。

「公爵さまを?どうして?」

詰問口調のウリエルに、愛想笑いを浮かべながら、「たまたまですよ」と言い訳をした。

「君の恋人は少し気が多いのかな。気を付けた方がいい」

公爵は親切ぶって言うと、果実酒を一気に飲み干して立ち上がった。

「そろそろ行こうか。男爵夫人」

「あら。私、まだウリエルさまとお話ししていたいですわ」

「なら、好きにしなさい。私は先に帰っている」

「まあ、せっかちなのは相変わらずですわね。こうと決めたら、絶対そうするところはお小さい時からずっと同じ」

ランカジャー夫人はブツブツ言いながら席を立った。

「では、ウリエルさま。ユーリさま。また何処かでお会い出来るといいですわね」

「ええ。本当に。思いがけず楽しい時間をありがとうございました」

「こちらこそですわ。でも本当に、私、夫がいなければ、ウリエルさまに猛アタックしていたと思いますわよ。ユーリさまはお幸せね。こんなに素敵な方が恋人でらして」

そう言い置いて、ランカジャー夫人は公爵の後を追って店を出て行った。
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