異世界で家庭菜園やってみた
「なかなか見る目のある人だね。男爵夫人は」

「そう、ですね」

向かいの席に移ったウリエルは、じっと悠里を見ている。

その視線に食べにくさを感じて、悠里はナイフを置いた。

「何ですか?」

「公爵を見ていたの?」

「穴のあくほどは見てませんよ。ただ、かっこいいなあと思って見てただけですもん」

「見てたんじゃないか」

「で、でも、ウリエルさんだって、すっごく可愛い人がいたら見るでしょ?それと同じですよ」

「見ないよ」

「嘘」

「嘘じゃない。俺が見たいのは、ユーリだけだから。ユーリ以外の女性を可愛いとは思わないよ」

「う、嘘ですよ。冗談ですよね?」

「こんなこと、冗談では言えない」

確かに、ウリエルはどこまでも真剣だった。

また切なげに揺れる瞳が、悠里を捕らえて離さない。

「ああ、もう。この際だから、はっきり言おう。俺はお前に惹かれてる。もう、どうしようもないくらいに惹かれてるんだ。
さっきみたいに、お前が他の男を見たりするのは耐えられない。
……お前にも、俺だけを見て欲しいんだ」

そう告げると、ウリエルは片手で目を覆った。

心の中はぐちゃぐちゃだった。

嫉妬に煽られて、言うべきでないことを言ってしまった後悔が押し寄せる。

(順番がめちゃくちゃだ……)





ただ鍬を求めるだけの旅であった筈なのに。

波乱含みの展開に、悠里の思考は停止中……。







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