異世界で家庭菜園やってみた
ウリエルが受付している間も掴まれたままだったからか、悠里は何となく迷い子になるのを心配されている子供のような気持ちになってしまった。

(実際そう心配されているのかもしれないけど…‥)


受付書類にサインをしているウリエルを盗み見た。

いつもの飄々とした表情だったけれど、そこには悠里では読み取れない感情も浮かんでいて、悠里は小さく小首を傾げた。

(さすがのウリエルさんも疲れちゃったかしら?)

この旅の間、ずっと悠里のことを気遣ってくれているのだ。

体力的にというよりは、精神的に疲れているのかもしれない。

(なら、温泉に入るのはちょうど良かったかも。ゆっくり浸かって、疲れを取ってもらお)

「男女一名ずつでいらっしゃいますね。では、こちらをお持ちください」

受付係に渡されたのは、タオルと華やかな色合いの服。

「入場されたあとは、更衣室でこちらにお召し替えくださいね。場内でのご移動は、これを着たままでお願い致します。貴重品はカウンターにお預け下さい。この番号札をお忘れになりませんように」

そう説明を受け、ようやくロビーの端にでんと構える、大きな木の扉の向こうへ入ることが出来た。

気の扉を入ると、男女別々の部屋に誘導され、そこで手渡された服に着替える。

更衣室に一歩入った途端、悠里は強烈な既視感を覚えた。

(あれ。これって……)

女性も子供も皆、赤や黄色と色は違うけれど、同じ型のワンピースを着て向こう側の扉から出て行く。

(そっか。ここって、健康ランドなんだ!)

悠里はますます楽しくなって来た。

畑仕事を終えた足で、祖母とよく通った健康ランド。

(よ〜し。思いっきり楽しむぞ〜!!)

気合も新たに、ドレスを脱ぎ捨てた悠里だった。





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