キミさえいれば
「お母さん、どうしてお父さん以外の男の人と関わりを持ったの?

お父さんを愛してなかったの?

私、お父さんとお兄ちゃんが大好きだった。

ずっと、ずっと一緒にいたかったんだよ。

お母さんのせいだよ。

ひどいよ。ひどい……っ」


私はうわーんと小さな子供のように机に顔を伏せて泣いた。


お母さんがいけないんだ。


あまりにも美人過ぎるから……。


だから、たもっちゃんと離れ離れになって。


兄とは知らずに、恋をしてしまった。


兄だとわかっていれば、恋なんかしなかった。


たとえ私の記憶がなくても、兄として接する事が出来たのに。


こんな苦しい思いをしなくても済んだのに……!


「凛、ごめんね……。ごめん……」


母さんがそばに来て、私の背中を撫でてくれている。


だけど溢れる涙は、もう止まりそうになかった。


先輩の笑顔が頭から離れない。


先輩の優しさが忘れられない。


先輩に抱かれた身体が、また先輩を求めてしまう。


大きな手も、少し低い声も、眼鏡の奥の優しい瞳も、全てが愛しい。


会いたいよ……。



先輩……。

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