キミさえいれば
写真か……。


そう言えば俺って、子供の頃の写真を一度も見た事がないんだよな。


なんでも親父が、間違ってパソコンに入っていた写真のデータを全部消したとかで、全然残ってないって言ってた。


困ったな。


一枚もなかったらどうしよう。


俺は家に帰るとすぐに、親父の書斎に入った。


「さすがに一枚くらい持ってるだろう。親なんだからさー」


俺は親父の本棚や、机の引き出しを開けた。


勝手に開けて申し訳ないけど、明日提出だから今から探さないとな。


「ん? これ……」


親父の机の一番下の引き出しに、何やらアルバムのようなものを発見した。


「あるじゃーん。

全然ないとか言うから、もう望みがないのかと思った」


俺は早速そのアルバムを開いてみた。


「えー、これ俺?

すげー可愛い。

自分で言うのもなんだけど、天使みてぇじゃん」


しばらくめくっていくと、小さな女の子の写真が出て来た。


「誰だろう、これ。

近所の子とか?

覚えてないな」


さらにページをめくっていく。


なぜかその女の子は何度も何度も登場する。


これってどう見ても、一緒に生活してるようにしか思えない。


一緒に食事をし、一緒に風呂に入り、一緒に出かけ、一緒に遊んでいる。


誰なんだ、この子……?
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