キミさえいれば
その日の夜、親父が帰って来ると、俺は早速親父に写真の女の子の事を尋ねてみた。


すると、親父の顔がみるみる強張っていった。


まずいと感じた俺は、とりあえず勝手に部屋に入った事を謝った。


だけど、親父は怒ったりはしなくて、ふぅと長いため息をついた。


「ちょっと保。父さんの部屋へ来なさい」


なんで?と思ったけど、俺は言われるまま、親父の後に続いて書斎に入った。


「まぁ、座れ」


親父に言われてソファに腰掛けると、親父も向かいのソファに腰掛けた。


「いずれ話す日が来るのはわかってたんだ。

今がその時かなと思う」


「え……?」


何? その深刻そうな顔。


なんか、嫌な予感がするんだけど……。


「保、その写真に写ってる女の子はな……」


俺はゴクンと息を飲んだ。


「お前の妹だ」


「はっ?」


い、妹?


「俺、妹がいたのか?

全然記憶にないんだけど」


全然記憶にないし、大体その子、なんで一緒に住んでないわけ?


「保、落ち着いて聞いて欲しい」

 
「な…に?」


何なんだよ……。


深刻そうな顔をして……。


「お前、中ニの時、事故に遭ったろ?

部活の帰り、バイクとぶつかって」


それは覚えている。


救急車で運ばれて、何針も縫ったんだ。


「あの時、お前な……。




記憶を失ったんだ」
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