キミさえいれば
「じゃ、じゃあさ。

俺の本当の母さんは、今どこに住んでるんだ?」


俺がそう言うと、おやじはすごく悲しい目をした。


「すまない……。

それが、もうどこに住んでるかわからないんだ……」


「どうして?」


「彼女が、それを望んだんだよ。

別れた後は、もう二度と会わないと言って」


そんな……。


どうして……?


俺の母親なのに……。


「ごめんな。保。

つらいことを聞かせてしまって」


俺は手に持っていたアルバムをそっとめくった。


そこには、それはそれは美しい女性が、俺と妹のそばで笑っていた。


これが俺の本当の母さんなのか……。


栗色の髪、栗色の瞳。


外国人なんじゃないかと思うほどに白い肌。


同じようにその女の子も、母親そっくりでとても可愛らしい。


待てよ?


この母親の顔。


どこかで見た事があるぞ。


見た事があるも何も、この顔は……!


「な、なぁ、親父。

俺の妹の名前ってなんて言うんだ?」


恐る恐るおやじに尋ねてみた。


「あぁ、その子の名前はな、父さんがつけたんだ。

自分の考えをきちんと持って、りりしく生きて欲しくて」


「りりしく……?」


「うん。



その子の名前はな。





“凛”だよ」

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