キミさえいれば




カーテンの隙間から、青い月の光が差し込んでいる。


あまりに綺麗でじっと眺めていたら、後ろから私を抱きしめる先輩がそっと髪を撫でてくれた。


「凛、俺な。

この額の傷が出来た時に、それまでの記憶を失くしたらしいんだ」


「やっぱりそうなんだ……。

そうなんじゃないかなって思ってた……」


「妹がいるなんて、聞かされてなかったし。

今の母親が、自分の本当の母親だとずっと思ってた」


お父さんは再婚してたんだね。


なんだかちょっと寂しい……。


「お父さんは元気なの……?」


「あぁ……。すげぇ元気だよ」


「そう。良かった……」


お父さんに会いたいけど、私がこの街に住んでいると知ったら、きっとビックリしちゃうよね……。


「凛……。

俺達の両親には黙っていよう。

それ以外の人は、俺と凛が兄妹だなんて知らないんだ。

だからこれまで通り、変わらず付き合おう」


「で、でも……」


「別れるなんてもう二度と言うな。

俺は絶対認めない。

どんな罰でも、俺が全部受けてやるから。

だから凛、俺のそばにいて……」


そう言って先輩が、私をぎゅっと抱きしめた。


「でも、先輩。

もし記憶が戻ったらどうなるの?

私のこと、それでも好きでいてくれるの……?」


「え……?」
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