キミさえいれば
たもっちゃんにとって私は、ただの妹。


先輩がたもっちゃんだった頃の記憶を思い出したら、妹の私とこんな関係になった事に嫌悪感を抱くかもしれないのに……。


「先輩の記憶が戻らないうちはいいけど。

でも、たもっちゃんの頃の記憶を思い出したら、私の事好きじゃなくなってしまうかもしれないよ。

そうなったら私、怖いよ……」


「凛……」


私は身体を先輩に向けて、ぎゅっとしがみついた。

 
先輩もぎゅっと抱きしめてくれる。


「凛、俺ってどんなヤツだったの?」


「ん……。

たもっちゃんはすごく優しかったです。

その優しさは、先輩と全く変わらない。

私、昔からいじめられっ子だったんです。

近所の男の子にすごくからかわれて。

そのたびにたもっちゃんが、私を守ってくれたの。

本当に仲良しで、大好きでした……」


「そうか……」


私はどうなのかな。


先輩の記憶が戻って、たもっちゃんが現れたら。


それでも先輩を好きだって言えるのかな……。


私が好きなのは先輩なの?


それともたもっちゃんなの?


なんだか、すごく難しい……。
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