キミさえいれば




今日、中間試験の発表があった。


いつもは部活で賑やかな放課後も、次第に静けさを増していく。


この頃、俺と凛は一緒に下校出来なかった。


そう、アイツ……。


藤堂勇人のせいだ。


アイツは今日、俺の教室にいきなり現れた。


『黒崎保ってどいつ?』


二年生とは思えない態度だった。


赤い髪だと聞いていたので、すぐにピンと来た。


『お前が白石凛の彼氏?』


そう言って、ジロジロと顔を見られた。


俺は凛の兄だと気づかれないかビクビクしていた。


でも、どうやらアイツはピンと来てないようで、しばらくすると何も言わずに教室を出て行った。


多分、気づかれてはいないと思う。


だけどこの状況、あんまり良い状況じゃない。


一体俺達はどうしたらいいんだろう。


そして、なにより凛が心配だ……。


そんなことを思っていたら、田辺と久保田がバタバタと俺の教室に駆け込んで来た。


「先輩!」


やけに息を切らしている二人。


「どうしたんだよ」


ひどく血相を変えて、一体何事なんだ?


「先輩、ヤバイかも……」


「黒崎先輩、凛が……!」


え……?
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