キミさえいれば
ひたすら走る。


心臓が潰れるんじゃないかと思うくらいに。


『白石が放課後、俺のクラスに来てたんです。

どうしたの?って聞いたら、藤堂に呼び出されたとかで。

白石と別れた後、久保田を迎えに行って、二人で話しながら窓の外を眺めてたら、藤堂と白石が体育館に向かってるのが見えたんです。

なんかおかしいなって思って。

それでピンと来たんです』


胸が張り裂けそうになる。


凛……。


頼む……。


どうか、無事でいてくれ。


「先輩、足速っ。

つ、付いて行けない……っ」


息を切らす田辺と久保田。


「先に行ってる。

お前らは後から入って来い!」


そう言って俺は、さらに走るスピードを上げた。


先に着いた俺は、体育館の扉を開けた。


靴を脱いで、体育館に入る。


でもシンとしていて、人の気配などなかった。


本当にここに凛がいるのだろうか……。


そう思った直後だった。



体育倉庫の方から、女の子の叫び声が聞こえた気がした。


まさか……!


俺は必死でそこに向かって走った。


ガラガラと扉を開けると……。


「…………っ」


有り得ない光景だった。


床にブラウスとリボン。


下着の上下が散乱している。


その向こうに見えるのは、赤い髪をした男と。


上半身裸で横たわる凛の姿だった。
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