キミさえいれば
久保田は素早く凛に衣類を着せると、田辺を中へ呼んだ。


「先輩。二人で凛を保健室に運びます」


「あぁ、頼むな……」


田辺が凛を背負うと、二人は体育倉庫を出て行った。


静かな体育倉庫に、藤堂と二人きり。


コイツは俺に押さえつけられて、身動きすら取れずにうめいている。


「どう料理してやろうか?」


ぐいっと腕をひねり上げる。


「うぅっ、いてぇー!」


本気で痛がる藤堂。


「お前、なんでこんなことしたんだよ!」


ほとんど犯罪じゃないか!


まじで、絶対タダじゃおかない!


「……別れろって言ったんだよ……」


「は……?」


「兄貴と付き合うなんてダメだって」


ドクンと心臓が大きく鳴る。


「……お前、気づいてたのか?」


「あぁ……。

だってお前の左耳の前の傷、俺が昔つけたから」


思わずその傷に触る。


知らなかった。


この傷はコイツがつけたものだったんだ……。


「でも凛のヤツ、お前と別れたくないって言うんだ。

だからこう言ってやった。

お前らが兄妹だってことバラしてやるって。

そうしたら、保の推薦が取り消されるぞって。

そう言ったら凛、俺に応じたんだ」

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