キミさえいれば
「クソ!」


そう言って、ぎゅっと目を閉じた。


凛……。


どうしてお前は……。


「バカだ、凛!

そんなことのために……!」


思わず俺は叫んでいた。


「そんなこと……?」


「推薦なんか取り消されてもいい。

大学にバラしたきゃ、バラせば良かったんだ。

俺は何て言われてもいい。

凛さえそばにいれば、俺は何もいらないんだ……」


だから、こんなことに応じて欲しくなかった……。


「お前も、凛と同じような事を言うんだな。

アイツもそう言ってたよ。

私は何を言われてもいい。

お前の将来を潰すなって……」


「え……?」


「なんなの? お前ら。

そんなに相手が大事か?」


大事だよ……、凛が……。


誰よりも……。


「な、なぁ……。

お前、最後まで……やったのか……?」


恐る恐る藤堂に尋ねてみた。


「あー……いや。

最後まではしてない。

アイツ、恐怖で気を失ったんだ。

さすがにそんな相手をヤるほど、俺も極悪じゃねぇからな。

離れようとした時に、お前が入って来て俺に蹴り入れたんだよっ」


そう……だったんだ……。


とりあえず最後は守れたんだ。


良くはないけど……、でも……良かった……。


「さすがサッカー部だよな。

すげぇ蹴りだった」


 
ん?


サッカー部?

 
俺ってサッカーやってたんだ。


合気道に足技はないのに、どうりでケンカの時は相手を蹴りたくなるわけだ。
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