キミさえいれば
「まぁ、なんとなくわかるよ。

お前、昔から凛の事となるとすごかったんだ。

あまりの溺愛ぶりに、兄貴が妹に恋してるって近所で噂があったくらい」


「え……?」


「だから、たとえ記憶が無くなっても、お前は凛を心のどこかで覚えていて、それでアイツに惹かれたんじゃねぇの?」


そうなんだろうか……。


そう言えば俺は、初めて凛を見た時から、凜の存在がすごく気になっていた。


可愛いからっていう、ただそれだけの理由じゃなかったと思う。


そうか。


昔からだったんだ……。


「俺、小さい頃からずっと凛が好きだったんだけどさ。

凜もお前同様に“たもっちゃん、たもっちゃん”って、ブラコンもいいとこだった」


「凛が?」


藤堂が苦笑いしながら頷く。


「だから俺、保が大嫌いだったんだ。

俺ら、毎日のようにケンカしてたよ。

あの頃はお前が俺よりちょっと強いくらいだったけど。

お前、随分強くなったんだな。

さっきのすごかった。

何だよ、あれ」


「あ、あれか。

合気道だよ。

中2の頃から習ってる」


「あー、合気道ね。

どうりで強いわけだ。

俺もケンカじゃそこらへんのヤツには負けねぇけど。

合気道じゃ、さすがにかなわねぇよ」


そう言って藤堂は、フッと鼻から息を吐いた。
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