キミさえいれば
「凛……。

久保田と田辺が俺に知らせてくれたんだ」


「え……?」


凛は視線を動かし、久保田達を見た。


「凛、怖かったでしょ?

かわいそうに……」


そう言って久保田が涙を流す。


「白石、気をつけろって言っただろ?

イヤな予感がしたんだ。

先輩がまだ学校に残ってて良かったよ……」


田辺も心配そうに凛の顔を見つめている。


「ごめんね、心配かけて……。

あと、ありがとう。

先輩に知らせてくれて……」


俺は凛の左手を取り、両手で握り締めた。


俺を見つめる凛の目に、みるみる涙が溜まっていく。


「先輩、ごめんね……。

他の人に……。

私、汚れちゃったよね……?

こんな私、もうイヤだよね……?」


凛の目からはらはらと涙が溢れていく。


その涙に俺はたまらなくなって、ベッドに腰かけた。


そして、すかさず凛の身体を起こして抱きしめた。


「バカ!

凛は汚れてなんかないっ。

そんなことで、イヤになったりするかよ。

それに凛、最後だけは守ったから……。

だから、大丈夫だよ……」


俺がそう言うと、凛の身体が震え始めた。


「ほん……とに?

私、無事だったの……?」


「あぁ……。

コイツらが教えてくれたから、間に合ったんだよ。

感謝しないとな……」


俺の言葉を聞いた凛が、声を上げて泣いた。
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