キミさえいれば
「せん…ぱい。

こ、こわかった……。

すごく、こわかったよ……っ」


泣きじゃくる凛。


「うん、ごめんな……。

守ってやれなくて……」


強く抱きしめながら、凛の髪をそっと撫でる。


凛の髪にマットの匂いがこびりついていて、俺も泣きそうになった。


「何かあったら俺に相談しろって言っただろう?

なんで黙ってた?」


あんなの脅しじゃねぇか。


俺に相談してくれれば、阻止できたのに。


「ごめんなさい。

本当にごめんなさい……」


凛の震えが止まらない。


どうしてやればいいんだろう……。


「凛……」


凛の頬に手を添えて、そっと包み込む。


俺を見つめる凜。


俺はそっと涙を指で拭ってあげた。


そしてそのまま、親指で凛の唇をなぞると。


さくらんぼみたいな凛の柔らかい唇に、自分の唇を近づけていった。


「ちょっ、ちょっと待ったーー!」


保健室に響き渡る田辺の声。


「せ、先輩。

俺らがいる事、完全に忘れてませんか?」


あ……、やべぇ……。


「先輩って、すごいんですね……。

呆然としちゃいましたよ。

あまりに熱いんで、なんか映画でも見てるみたいでした……」


二人の言葉に、俺の顔は一気に熱を帯びた。
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