キミさえいれば
「あ、あの。

俺ら邪魔みたいなんで、もう帰りますね」


そう言って二人が立ち上がる。


「いや、邪魔だなんて。

そんなことはない……」


うー、明らかに動揺した声が出て恥ずかしい。


「いえ、あの。

もう刺激的過ぎて見てられないです。

し、失礼します」


「凛、また明日ね。

しんどかったら無理しなくてもいいけど」


久保田の言葉に、凛が俺の腕の中でコクンと頷いた。


二人は俺に頭を下げると、保健室を出て行ってしまった。


俺としたことが。


何やってんだよ、人前で……。


まぁ状況が状況だったし、しょうがないよな……。


「凛、俺らも帰ろうか。

立てるか?」


「うん、大丈夫みたい」


凛はゆっくり立ち上がると、靴を履いた。


俺は凛のカバンと自分のカバンを持つと、凛を支えながら保健室を出た。

 

その後俺は凛の自転車で、凛を家まで送ってあげた。


この時間だと母親に鉢合わせするかもしれなかったけど、どうやらこの日はもう出勤した後だったようで、アパートにはいなかった。


家に帰るなり、凛がシャワーを浴びたいと言うので、俺は凛の部屋で待つことにした。


待っている間、今日の出来事が思い出されて、ずっと胸が痛かった。
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