キミさえいれば
ひとしきり泣いて落ち着いた私は、先輩と夕飯を食べた後、一緒にベッドに横になった。


先輩は私を後ろから優しく抱きしめてくれている。


「凛。

藤堂がな、申し訳なかったって言ってた」


「え……?」


ハヤト君が?


「お詫びに、俺達が兄妹だって事、黙っていてやるってさ」


そんなこと言ったんだ。


信じられない。


「凛が俺のために身体を張った事が、ショックだったみたいだよ」


「そう……」


「アイツ、凛に本気だったんだな」


そうなのかもしれない……。


何度か、やめるなら今だぞって言ってた。


私達を別れさせるために言っただけで、本当はあんなことしたくなかったのかもしれない。


ハヤト君だけが悪いんじゃない。


やっぱり兄と妹が付き合うって、そんな簡単な事ではないんだ……。


「凛、眠れそう?」


「ん、どうかな……」


私が眠らないと先輩は帰れないのに、全然眠れそうにない。


「なぁ、凛。

しばらく……抱くのダメだよな?」


先輩の意外な言葉に、ドキッと心臓が跳ね上がった。


「怖い目に遭った後だし、今は俺とでもイヤだろ?」


「先輩……」


そう……なのかな?


ううん。


むしろ私は……。


「先輩。

私、先輩となら怖くない。

今日のこと、先輩に消して欲しい……」


私がそう告げると、先輩はたがが外れたみたいに、私に唇を激しく重ねた。
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