キミさえいれば
藤堂の話を聞いた俺は、うーんと唸ってしまった。


「お前らの親の離婚。

なんか事情がありそうだよな」


そうなんだろうか……。


俺にはその頃の記憶が全くないし、何がなんだかさっぱりわからない。


「まぁ、とにかくよ。

絶対バレないようにしろよ。

特に母親にはな」


「あ、あぁ……」

 
もちろん、バレるわけにはいかない。


俺らの関係を守るためには……。





その日の放課後、俺と凛は帰り道をゆっくり歩いていた。


「えっ? 母さんの男性トラブルが離婚の原因じゃない?」


ビックリした顔で目を見開く凛。


俺は昼休憩に藤堂から聞いた話を凛に伝えていた。


「うん……。

俺達の母親は浮気するようなタイプじゃないって、藤堂が言うんだ」


凜はコテンと傾げた。


「でも、母さんはこう言ってた。

全部母さんが悪いのよって。

お父さんに申し訳ないから、もう二度と会えないところに行くのよって、そう言ってたもの」


「俺も親父に聞いたら、親父もそう言ってた。

なのに藤堂は、どうしてあんなふうに言うんだろうな?」


俺達には、さっぱりワケがわからなかった。
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