キミさえいれば
「白石ちゃんって、お願いすればヤらせてくれるんだよね?」


ニヤリと笑うチャラ男。


あまりに突拍子もなくて、私は呆れたようにハッと息を吐いた。


「そんな噂、本気で信じてるんですか?」


そんな経験はおろか、男の人と付き合った事もないのに。


「火のないところに煙は立たないって言うじゃん?」


あんな噂を鵜呑みにして迫ってくるなんて。


この人、なんてバカなんだろう。


「とにかく、私はそんな事はしないので」


そう言ってスッと立ち上がると、チャラ男に腕をガシッと掴まれた。


「ちょっ、何するんですか?」


慌ててふりほどこうとしたけど、掴まれた手は思った以上に強くて。


「は、離してください!」


そう叫んだ直後、脳がぐらりと揺れて、背中に鈍い痛みが走った。


気がつけば私は、壁を背にしていて。


両腕を壁に押し付けられていた。


「やめてください!」


いや。


いやだ。


どうして、こんなこと?


「も、もうすぐ生徒会の他のメンバーが来ますよ。

こんなことしている場合じゃないですよね?」


震える声を絞り出して、精一杯の抵抗をしてみせた。


だけどチャラ男はやめるどころか、ますます私の腕を掴む手に力を込めていく。


そして、ククッと喉を鳴らして笑った。


「残念だけど、白石ちゃん。


誰も来ないよ」
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