キミさえいれば
「え……?」


母さんの突然の言葉に、思わずケーキをフォークからお皿に落としてしまった。


「もう随分前になるんだけど、お店のママがね、凛が男の子と一緒に歩いてるところを見たんですって」


「お店のママが……?」


「うん。

私が友達じゃない?って言ったら、手を繋いでたって言うじゃない。

あーそれなら彼氏かなって思ったの。

凛の方から紹介してくれるの待ってるのに、なかなか教えてくれないんだものー」


そう言って母さんがニッコリと笑う。


「背が高くて、かなりのイケメンだって聞いたわよ。

やるわね、凛」


「う、うん……」


無意識に顔が引き攣ってしまう。


「そのうちお母さんにも紹介してね」


母さんの言葉に、私は口角を上げるのが精一杯だった。
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