キミさえいれば



先輩に送ってもらって自宅に帰ると、私はベッドに突っ伏してひたすら泣いた。


いや。


先輩と離れるなんて、絶対にいやだ。


おばあちゃんの家になんて行きたくない。


どうして先輩と私は兄と妹なの?


こんなに愛し合っているのに。


もういっそのこと、このまま二人で死んでしまいたい。


死んで、もう一度生まれ変わって。


違う形で出会いたい。


兄と妹じゃなく。


血の繋がらない、他人として……。


そんなバカな事を考えていたら、私のスマホの着信音が鳴った。


着信の表示を見ると“黒崎保”の文字。


私はすぐに通話ボタンを押した。


「先輩?」


『もしもし…』


え……?


先輩の声じゃない。


一体誰……?


『すみません。
 
あの、僕……。

この電話の持ち主をバイクで跳ねてしまったんです……』


まさかの言葉に、ドクンと心臓が鈍い音を立てる。


『彼のスマホを見たら、あなたとの通話履歴が一番多かったので、それで大変失礼ですが、彼のスマホであなたに電話をかけたんです。

彼は今から救急車で、松岡病院に運ばれます。

僕は警察の事情聴取が終わったらすぐに行きますから、あなたも病院に来て頂けますか?』


そんな……。


嘘でしょう?


先輩……!


私は電話を切ると、急いでアパートを飛び出した。
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