キミさえいれば
驚いた顔で目を見開くその人に、私はコクンと頷いた。


目尻の下がった優しい顔は、最後に見た時と何ひとつ変わっていなくて。


「お父さん……!」


私は胸いっぱいになって、思わずお父さんの胸に飛び込んだ。


「凛? 凛なのか? 本当に凛?

よく顔を見せて」


私はお父さんを見上げた。


「本当だ。本物の凛だ……。

信じられないよ、凛。

どうしてここにいるの?」


お父さんの目が涙で滲んでいく。

 
「私……たもっちゃんと同じ高校に通ってて、偶然出会ったの」


「同じ高校? そうなんだ……。

こんな近くにいたなんて……。

お父さん、凛に会いたかったよ。

ずっと、会いたかった」


お父さんがぎゅっと抱きしめてくれる。


「お父さん、私も会いたかった。

ずっと、ずっと探してたんだよ」


お父さんから懐かしいタバコの匂いがする。


私は小さな子供のように、お父さんの腕の中で声を上げて泣きじゃくった。
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