キミさえいれば
お父さんは胸を痛める笹岡さんに、「もう今日は遅いし、家に帰りなさい。また連絡するから」と優しく促した。


笹岡さんは深く頭を下げて、病院を後にした。


笹岡さんが帰ると、私とお父さんは処置室前の長椅子に横並びに腰を下ろした。


「凛、ビックリしただろう?

保に記憶が無かったから……」


「うん……。

だから私、つい最近まで彼がたもっちゃんだとは思ってなかったの。

生徒会の先輩後輩として接してたんだよ。

私、先輩に同じ名前の兄がいる事を話していたから、お父さんから真実を聞かされて、私が妹だと気づいたみたい」


「そうだったのか……」


そう言って、お父さんが床に視線を落とした。


「凜、元気だったか?

お母さんも……元気か?」


「うん。私達は元気だよ」


「そうか。それならよかった……」
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