キミさえいれば
「お父さんはお母さんとは真逆のタイプだから、よくイライラさせてたよ」


苦笑いするお父さんに、私も思わず眉を曲げた。


お父さんってよくしなる木みたいに柔軟性があって、しなやかな人だもんなあ。


優しいし、動じないし、包容力もある。


でも、そんなお父さんに母さんはイライラしていたのか。


なんだか不思議な感じ……。


「凛、お母さんは保が近くに住んでる事を知ってるのか?」


「うん……。この前一緒にいるところを見られてしまって……」


「お母さん大丈夫だったか?」


私は首を横に振った。


「すごく動揺してた。

近いうちに引っ越そうって言ってる……」


「えぇっ?」


口に手を当てて顔をしかめるお父さん。


「そんな……。せっかく凛に会えたのに……」


「私もイヤだよ。

お父さんやたもっちゃんと、もう離れたくない……!」


ぽろぽろと涙を流す私の頭を、お父さんが優しく撫でてくれる。


「大丈夫だよ、凛。

お母さんは、保が記憶を失っている事を知らないんだから。

その事を伝えたら、引っ越したりしないんじゃないかな?」


「え……?」

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