キミさえいれば
「探してた……?」


そう尋ねると、先輩は「うん」と頷いた。


「父さんと母さんが離婚してからずっと……。

父さんが再婚してからも……。

おばあちゃん家の庭で俺、最後に言ったよね?

必ず会いに行くって。

その約束果たさなくちゃと思って、必死だった」


ちょっと待って……。


それって……。


まさか……!


「た、たもっちゃんなの……?」


震える指を先輩から離し、恐る恐る尋ねた。


きょとんとする先輩。


「え、何言ってるの? 当たり前だろう?」


そ…んな……。


うそだ……!


「凛? どうして泣いてるの?」


動揺して上半身を起こす彼。


私は身体の震えと涙が止まらない。


「なん…でも…ないよ……。

ひさしぶりに会えたから……、嬉しくて……」


「そうだったんだ。

俺も嬉しい。

やっと会えたから」


可愛い顔で、にっこりと笑う彼。


無邪気なその笑顔は間違いなく、遠い日の記憶の中の兄の顔だった。


「わ、私、お父さんに電話してくるね。

たもっちゃんが目を覚ました事、知らせなきゃ」

 
カタンと椅子から立ち上がると、私は静かに病室のドアを開けた。
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