キミさえいれば




「うー。きついー」


「一体何週走らせるの? あの先生」


私は今、クラスの女の子達と共にグランドを走っている。


冬の体育って、どうしてこう走らされる事が多いんだろう。


それにしてもきつい……。


最近寝不足だったし、食欲もないから、体力がすっかり落ちているようだ。


「凛、大丈夫? 顔色悪いけど」


美咲が走りながらも、私の心配をしてくれる。


「うん、なんとか……」


ニッと口角を上げて見せたけど、本当は結構きつかった。


「あと一周~」


先生の言葉に、みんなが「えーーっ」と声を上げた。


あと一周か……。


「うっ」


やばい。


なんだか気分が悪い。


どうしよう。 


視界がゆらゆら揺れる。


思わず走る足を止めてしまった。


「凛?」


私が付いて来ない事に気づいた美咲が、私のところに駆け寄って来る。


私はその場にしゃがみこんだ。


「大丈夫? 凛。

顔が真っ青じゃん!

まずいよ、これ。

先生ー!」


美咲の声に、先生が駆け寄って来た。


「白石さんの調子が悪そうなんです。

保健室に連れて行ってもいいですか?」


「あら、ホントだ。

顔色が悪いわね。

久保田さん、お願いしていい?」


「はい。凛、立てる?」


「うん」


私は美咲の肩に掴まり、ゆっくりと歩き始めた。
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