キミさえいれば
「失礼しまーす」


保健室に到着したけど、中はシンとしていて誰もいなかった。


「保健室の先生、いないのかな?

凛、しんどいでしょ?

誰もいないみたいだし、ベッド使うといいよ」


「うん……」


私はベッドにゆっくり横になった。


「先生にメモ書き残しとくね」


美咲の声が保健室に響く。


美咲って本当に頼りになるよね……。


しばらくすると、美咲が私のところへ近づいてきた。


「メモは残しておいたから、ゆっくり休むといいわ」


「うん、ありがとう」


「いいよ、全然。

私はランニングしなくて済んだし」


そう言って軽く舌を出す美咲。


「じゃあ私、授業に戻るね」


「うん」


にっこり笑って手を振ると、美咲は保健室を出て行った。


美咲がいなくなると、急に室内が静かになり、私はそっと目を閉じた。


こうすれば楽になるかと思ったのに、かえって気分が悪くなってくる。


気持ち悪っ。


私はベッドから出て、近くの流し台へと走った。


直後、ゴホゴホという咳と共に嘔吐してしまった。


息を整えながら、しばらくその体勢のままでいたら、誰かが走って来て私の背中をさすった。


「大丈夫?」


ちらりと視線だけ向けると、白衣を着た女性が立っていた。


保健室の先生、戻って来たんだ……。
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