キミさえいれば
次の日が土曜日だったから、私と先輩は電車に乗って市外へと出かけた。


先輩が調べてくれた産婦人科へ行くために……。


院内に入ると、ピンクを基調とした空間になっていて、普通の病院とは全然違う雰囲気なことに驚いた。


受付を済ませると、問診表と検尿カップを渡された。


問診表には、今日来院された理由は?と書かれていた。


私は『妊娠しているかどうかを調べるため』にチェックを入れた。


検尿を済ませ、先輩と横並びにソファに腰掛ける。


周りには沢山の妊婦さんがいて、そのお腹の大きさに圧倒されてしまった。


ここにいる女性達はみんな、赤ちゃんが産まれる日を心待ちにしてるに違いないんだ。


生まれた赤ちゃんは、パパとママに可愛がられて、すくすくと成長していくのだろう。


だけど私は……。


そう思うと、目に勝手に涙が溜まっていく。


それに気づいた先輩が私の手を黙って握ってくれた。


しばらくそうして待っていると。


「白石さん」


名前を呼ばれた。
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