キミさえいれば
だけど、すぐに現実に引き戻されてしまった。


先生に「どうなさいますか?」と聞かれたからだ。


先輩は18歳、私は17歳だし、結婚しようと思えば、結婚出来る年齢だ。


普通はそうだけど。


私達は普通じゃない。


血の繋がった兄と妹だから……。


何も答えられず涙を流す私を見かねて、先輩が「もう少し考えます」と言って、診察室を後にした。
 

病院を出て、先輩と私はゆっくりと駅までの道を歩いた。


途中、特に会話はなかった。


駅ビルに入り、景色が一望出来るベンチに腰掛け、しばらく街の景色を眺めた。


私はさっき病院でもらった赤ちゃんのエコー写真をバッグから取り出した。


「先輩……」


「ん……?」


「赤ちゃん、動いてたね」


「うん……」


「可愛かったね……」


「そうだな……」


「産めたら……いいのに……」


「凛……」


泣きそうな顔で、私の顔を見つめる先輩。


「大好きな人の赤ちゃんだもの。

私、産みたいよ……」


そう言ったら、先輩がぎゅっと肩を抱き寄せてくれた。


「ごめんな、凛」


先輩の言葉に、私の涙腺は崩壊してしまった。
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