キミさえいれば
私は駅ビルの片隅で、沢山泣いた。


先輩も泣いていた。


先輩は、何度もごめんねと言った。


守るはずが、苦しめてごめんと。


先輩が悪いんじゃない。


むしろ私が悪いんだと思う。


兄だと先に気づいた時点で、きちんと別れなかったのだから。


二人でひとしきり泣いた後、先輩と私はじっくり話し合った。


だけど、やっぱりどう考えても産むわけにはいかなくて……。


こんな残酷な事ってない。

 
赤ちゃんには何の罪もないのに、私の身勝手な都合でいのちを絶たれてしまうんだから。


そんなのってかわいそう過ぎる。


ごめんね。


ごめん。


あやまったって、許してもらえるわけないよね。


お父さんにも、お母さんにも嘘をついて。


罪を重ねてしまったことで、本来失わなくていいあなたを失ってしまう。


こんな私は、生きている価値もない……。


前に先輩と美咲が私を純粋だと言ってくれたけど、私は純粋な子なんかじゃない。


学校の女の子達が言ってたように、男をたぶらかす存在で。


母さんの職業も、古いアパートも関係ない。



私自身が、悪い魔女みたいな女だったんだ……。
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