キミさえいれば
ずっと手の中にあったスマホを開くと、私はたもっちゃんの画像を探した。


中1の頃のたもっちゃんと、付き合い始めてからの先輩。


私だけに向けてくれたその優しい笑顔を、しっかり脳裏に焼き付けた。


ポケットに入れていた赤ちゃんのエコー写真を取り出し、スマホと共にぎゅっと胸に抱きしめる。

 
どうしてだろう。


なぜか心がとても静かだ。


お腹に命があるせいだろうか。


自分が自分ではないような、そんな気がしてしまう。


たもっちゃん……。


沢山愛してくれて、ありがとう。


いつも守ってくれて、ありがとう。


ごめんね。


私が弱かったばっかりに。


お父さん。
 

凛々しく生きて欲しいっていうお父さんの願いに応えられなくて、ごめんなさい。


お母さん。


これからは自分の人生を自由に生きてね。


美咲。


私の唯一無二の親友なのに、何も話せなくてごめんね。


みんな本当にありがとう。


さようなら……&。


私はスマホと写真をポケットにしまうと、川岸の一番端っこまでゆっくりと歩いた。


端に足をかけると、両腕をゆっくり水平に広げた。


そして目をそっと閉じて。


そのまま身体を前に倒した。




たもっちゃん。


 
愛してる。


 
ずっと。



ずっと、愛してるから……。
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