キミさえいれば
「白石、ちょっと顔貸して」


そう言って突然私の腕を掴んで、ガタンと椅子から立ち上がらせる生徒会長。


そして、そのまま私の腕を引いて歩き始めた。


「えっ? ちょっ、あのっ」


戸惑う私の事なんておかまいなしに、生徒会長は私をズンズンと引っ張っていく。


「いやーーっ。黒崎先輩が、白石さんの手を引いてるーーー!」


生徒会長と共に教室を出ると、廊下におぞましい数の女子が群がっていた。


その中を、スタスタと何の躊躇もなく歩く生徒会長。


こ、これは。


ものすごく視線が痛い……。


いつもジロジロ見られる私だけど。


そんなの比じゃないよ、これは……。


生徒会長は廊下を突っ切ると、校舎の一番端まで歩いて突き当たりの扉に手をかけた。


扉が開いた途端、強い風に煽られてはためくスカートの裾。


ここはどうやら非常階段のようだ。


階段の踊り場に立つと、クルッと振り返る会長。


ずっと繋がっていた手がようやく離されたかと思ったら、ギロリと鋭い視線を向けられた。


「白石、これはどういうことなんだ?」


会長の手にあるのは、私が午前中に提出した辞表で。


「どういうことって、そのままですけど」


視線も合わせずに答えると、会長が突然ダンッと非常扉を叩いた。


「お前、ふざけるな……!」


会長のドスの利いた声に驚いて、私は身体がギュッと硬直してしまった。
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