キミさえいれば
「辞めるなんて、絶対に認めない」


辞表がすんなり承認されるなんて思ってなかったから、予想通りの展開だ。


ここで怯むわけにはいかない。


なんとしても押し通さないと。


「会長が認めてくれなくても、私は辞めます。

役員二人から侮辱されたんですよ。

そんな場所で、活動なんて出来ません。

すみませんが、どなたか他の人を探してください」


一方的に話して、失礼しますと立ち去ろうとしたその時。


ビリッと何かが破れる音がした。


まさかと思って振り返ると、私が提出した辞表が見るも無残に破られていた。


そしてその紙は会長の手から離れて、紙吹雪となって空へと舞い上がっていった。


「何するんですか!」


「何って、見たまんまだけど?」


いたって涼しい顔の会長。


ひどい。


破り捨てるなんて。


「……そうですか。それならまた書いて提出します」


何回でも書いてやるんだから。


「別にいいよ。また破るだけだから」


「はぁっ?」


一体何なの?


こんな人とじゃ全く話にならない。


あぁ、もうどうしたらいいのよ。


途方に暮れていたその時。


「なぁ」


会長に呼ばれた。


だけど、返事すらしたくない。


「昨日は、ごめん……」


体を90度に曲げて頭を下げる会長。


私は目をパチパチとさせた。
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