キミさえいれば
そんな思いでいる時に、あのキスを見てしまったの。


私は、このままだと二人に間違いが起こるかもしれないと思った。


確かに二人は血は繋がってない。


だけど、戸籍上は兄妹なの。


もし人様に知られたら、こんなみっともないことはないし、それより何より……。


私は凛を保に取られたくなかったの。


なぜかって……?


それは……。


保が夕紀さんに、とても似ていたからよ。


洋二さんは私が気づいてないと思っていたかもしれないけど、私は知っていた。


洋二さんは、夕紀さんが好きだったの。


学生の頃からずっと。


夕紀さんが結婚してからもね……。


もちろん私と出会ってからは、私を大切にしてくれていたけど。


でも、私はずっと嫉妬していた。


洋二さんと夕紀さんが仲良く話す姿を見るたびに、胸が痛んだ。


保を引き取りたいと言った理由も。


洋二さんが、保にやたら甘いのも。


保に、夕紀さんの面影があるからなんじゃないかって。


そう思うと、ずっとずっと苦しかったの。


だから私は、保の事を心のどこかで嫌ってた。


それは、保自身じゃなくて。


保の顔に見え隠れする夕紀さんの事を……。

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