キミさえいれば
「俺……昨日あの後すぐに、白石と寝たって噂のあるヤツに片っ端から聞いていったんだ。

本当に白石と寝たのかって」


やだ。


そんな噂のある人がいるの?


信じられない……。


「そうしたら、全員否定したんだ。

関係を持つどころか、話したこともないって。

白石が言ってた通り、単なる噂だったんだな。

それなのに噂を真に受けて、白石をひどく傷つけてしまって。

本当に悪かった」


そう言って、もう一度深く頭を下げる会長。


その姿はやたらと綺麗で……。


「まだ怒ってる? 気が済まないなら、土下座しても良いよ」


そう言って先輩が膝を床につこうとするから、慌ててそれを止めた。


「そんなことしてもらわなくても大丈夫です。

ちゃんと謝ってもらったし。

誤解が解けたのなら、もうそれで充分です……」


初めて会った日、私が馴れ馴れしくたもっちゃん”なんて呼んだから、それで軽い子だって誤解させてしまったのかもしれないし。


わかってもらえたのなら、それでいい……。


「でも、正直怖いんです……。

生徒会室に入るのが…」


あの人を見ただけで、きっと震えてしまうと思う。


「それは、確かにそうだよな」


ふぅと息を吐いた会長が、視線を空へ向ける。


その横顔がたもっちゃんに似ている気がして、胸の奥にチクンと痛みが走った。


「じゃあさ」


夏の名残のある熱く湿った空気が、私達の間をすり抜けていく。


きょとんと首を傾げていたら、会長が私を見てにっこりと笑った。




「俺が、白石を守るよ」
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