キミさえいれば
「今回のことは、全て洋二さんから聞きました。

もっと早く伺うべきでしたのに、申し訳ありません」


「いえ、そんな……」


頭を深く下げる黒崎さんの様子に、母さんは少し戸惑っているようだ。


「あなたが凛ちゃんなのね。

洋二さんの言ってた通り。

天使みたいに可愛いわ」


にっこりと笑って、私に近づいて来る黒崎さん。


天使だなんて……。


そんなふうに言われて、なぜか私の頬は熱くなった。


「保の赤ちゃんが、出来たのね……?」


黒崎さんの言葉に、私の心臓がドクンと鈍い音を立てる。


私は戸惑いつつも、こくんと頷いた。


「兄妹でこんなことになってしまって。

思い悩んで、それで川に飛び込んだのね?

つらかったわね。

苦しかったでしょう?

かわいそうに……」


そう言って、黒崎さんは私の手を両手で包んだ。


その手は柔らかくて、とてもあたたかかった。


「生きてて、本当に良かったわ……」


目を細めて優しい顔で笑う黒崎さんを見ていたら、私の目に一気に涙が溜まってしまった。
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