キミさえいれば
「それで、あの……。

今後のことは……?」


黒崎さんが、母さんの目を見て言った。


母さんは、私の顔をチラチラと見ている。


「今もその話をしてたんですが、保も凛もまだ若いですし、今赤ちゃんを産むのは無理なんじゃないかって」


そう言って溜め息をつく母さんを、黒崎さんはせつなそうに見つめている。


「そうですか……」


黒崎さんはその言葉と共に、視線を床に落とした。


やっぱり、もう駄目なの……?


高校生の私達じゃ、どうしようも出来ないの?


先輩と私の赤ちゃんを、諦めないといけないの……?


そんなの、私……。


私はまた悲しくなって、布団をぎゅっと握りしめた。


「ねぇ、凛ちゃん」


「はい……」


「凛ちゃんは、どうしたい?」


「え……?」


どういう……意味?


「赤ちゃんと、さよならしたい?」


黒崎さんの言葉に、私は首を横に振った。


「私。


私は……。


産みたい、です……」


涙ながらにそう告げると、黒崎さんは優しく微笑んだ。

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