キミさえいれば
「白石さんも泊まってくださって良かったのにねぇ」


キッチンでお皿を洗いながら、黒崎さんが言った。


母さんは年越しそばを食べた後、アパートに帰ってしまった。


元夫の再婚した家に泊まるのは、さすがに気が引けるようで。


「一人で年越しなんて、させたくなかったわね」


「そうですね……」


私も帰ろうか?って言ったけど、母さんは凛は残りなさいって言って聞かなかった。


「明日の初詣にまた来るって言ってたので」


一旦帰ってまた来るって、面倒な気もするけど。


それが母さんの性格だからどうしようもない。


「そうね。

明日は5人でおせちをいただきましょうね」


「はい」


私と黒崎さんは顔を見合わせて笑った。


「おーい。もうすぐ年越しだぞー」


リビングからお父さんの声がする。


「あら、もう?」


「早いですね」


私と黒崎さんは食器を片付けると、リビングへと向かった。
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