キミさえいれば
「私、あなたの変な噂。全然信じてないから」


「え……?」


「単なる嫉妬でしょ?

凛があまりにも可愛いから。

男性経験なんて、まだないんじゃない?

雰囲気でわかるよ。

純粋だもの」


純粋?


私が?


「そんな言葉、初めて言われた」


自分では気高く生きているつもりでも、あんなに色々言われ続けていると、本当に私は汚れてるんじゃないかって。


この頃、そんなふうに感じていた。


「……つらかったね」


彼女の言葉があまりに優しいから、枯れていた心に水が注がれていくみたい。


嬉しくて溢れそうになる涙を、照れもあって必死に堪えた。


「ねぇ、凜。

生徒会を辞めたいって思ってるんでしょう?」


「あー、うん……」


「黒崎先輩に聞いたの」


黒崎って、誰だったっけ?


あぁ、生徒会長か。


(きし)先輩が原因なんでしょう?」


「岸って?」


「広報担当の岸大亮先輩だよ。

なんか軽そうな人。

あの先輩に襲われかけたんでしょう?

怖かったよね」


あの人、岸って言うんだ。


私ってば本当に名前が覚えられないな。


「でも、もう大丈夫よ。

岸先輩は、黒崎先輩に頭が上がらないから。

っていうか黒崎先輩に逆らえる人って、この学校にはいないと思うよ」


逆らえる人がいない?


どういうこと?
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