キミさえいれば
バイトが終わって店の外に出ると、黒崎先輩がコンビニの前で私を待っていた。


「あ、終わった?」


そう言って、ゆっくりと立ち上がる先輩。


私は自転車のカゴに学校のカバンを入れると、ロックを外した。


「まぁ、歩きながら話そうか」


先輩の言葉に、私達は横並びに歩き始めた。


「あの、先輩の家ってこの辺りなんですか?」


このコンビニによく来るって言っていたけど。


「合気道の道場がこの通りの裏にあるんだ。

だから、その帰りによく寄ってたんだ」


先輩が通う道場がすぐ近くにあったんだ。


全然知らなかった……。


「4月からバイトしてたのに、どうして一度も会わなかったんだろうな」


「私、つい最近22時上がりになったので。

だからだと思います」


「あーそれでなんだ。

俺、行きはここに寄らないしなあ」


場所選びには細心の注意を払ったのに、一番見つかっちゃいけない人に見つかってしまうなんて。

 
ホント私って、とことんツイてない……。


「なんでバイトなんかしてるの?」


「え? あ、えと……」


「欲しいものでもあるのか?」


「いや…そうじゃないんですけど。

ちょっと、事情があって……」


「事情、ねぇ……」


先輩は、ポツリと言った。
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