キミさえいれば
白石(しらいし)(りん)


俺は彼女の存在を、彼女が入学した当初から知っていた。


今年入学した一年生にむちゃくちゃ可愛い子がいると、二年の男子が大騒ぎしていたから。


4月の終わり頃だったと思う。


理科室に移動していた時だった。


一緒に歩いていた友達に、肘でトントンと二の腕を突かれた。


「あの子だよ、白石凛」


教えてくれなくてもいいのに、わざわざ教えてくれた。


別に興味はなかったけど、なんとなく視線を向けてみたら。


なぜか、時が止まったような気がした。


ハッキリ言って驚いた。


生まれてこの方、こんな可愛い子を見た事がなかった。


白人女性かと思うくらいに白い肌。


栗色の髪と瞳。


大きな目と、さくらんぼみたいな色の可愛い唇。


スタイルも抜群に良くて。


俺だけじゃなく隣にいた友達も、周りにいた男子も。


みんな白石を食い入るように見ていた。


不思議なことに、1年3組の時間割が、ほとんどの2年の男子に知れ渡っていて。


白石が家庭科室へ移動すると、用もないのに家庭科室前には人だかり。


白石のクラスが運動場で体育をすれば、男が窓際に群がっていた。


白石の教室の前を、用もないのにわざわざ通るヤツも大勢いて、その人気はアイドル並みだった。
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