キミさえいれば
だけど、5月に入った頃からだろうか。


白石の変な噂を聞き始めた。


男を誘惑したり、言い寄られれば誰とでも寝る子だと、同じクラスの女子が話しているのを何度も聞いた。


俺は、単なる女子の嫉妬だろうと思っていた。


実際男子の大半は、そんな噂など信じていなかった。


だけど、それは日増しにひどくなっていった。


母親の仕事が水商売だとか、家がかなりの貧乏だとか。


白石の家庭事情まで浮上していて、なんだか不憫な気持ちさえした。


だけど俺とは接点もないし、俺と白石が話をすることは、きっと卒業までないだろうと思っていた。


そんな時だった。


白石が生徒会役員に立候補してたんだ。


票の数字までは聞いてないけれど、俺に次いで断トツの数だったらしい。


恐らく男子の票が入ったんだと思うけど。


初めての生徒会の集まり。


俺はガラにもなく少し緊張していた。


あの白石と、同じ部屋で過ごす日が来るとは思ってもみなかったから。


だけど……。


その数十分後、俺は衝撃を受けることとなる。


『たもっちゃんだよね?』


気に入った男には、自分から声をかけて落としにかかるという噂。


まさか事実なのか?


俺は混乱していた。
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