キミさえいれば
それにしても…。


こんな遅い時間に、こんな薄暗い住宅街をひとりで大丈夫なのか?


これだけ可愛いんだ。


いつ危険な目に遭ってもおかしくない。


ついこの前だって大亮に襲われそうになったのに、どうしてこうも無防備なんだろう。


「白石の家ってどこ?」


「隣町です」


「隣町?

うわー、それは歩いてたんじゃ遅くなるよな。

あっ、白石の自転車荷台があるじゃん。

二人乗りする?」


「はい?」


「俺が漕ぐから、後ろに乗って」


白石がひどく驚いた顔をして、俺を見ている。


まぁ、戸惑う気持ちはわかるけど。


でも、心配なんだ。


こんな遅い時間に一人で帰すのが。


いつまでも立ち尽くしてる白石の自転車を奪い取ると、俺はすぐさま自転車に乗った。


「乗って」


強引だとは思う。


でもそれくらいしないと、応じてくれないから。


白石はふぅと息を吐くと、仕方なくといった感じで荷台に腰を下ろした。


「ーで、どっちの方向に行けばいい?」


「あの、ベアーっていうスーパー知ってますか?」


「知ってる。確か激安なんだよな」


「そこからわりと近くなんです」


「わかった。そこを目指す。

しっかりつかまってて」


俺はペダルに足をかけると、猛スピードでそのスーパーを目指した。
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