キミさえいれば
10月に入ったせいか、夜の風が少し寒くなっていた。


そんななか、俺は白石を後ろに乗せ、自転車をひたすら漕いだ。


しばらくすると、ベアーっていうスーパーが見えてきて。


その店の前で俺はブレーキをかけて止まった。


「スーパーには着いたけど、家はどこ?」


「あ、もうここで大丈夫です」


「家まで送るよ。危ないだろ?」


「すぐそこなんで、気にしないでください」


意外と強情なんだな。


さて、どうするかな。


「ふぅん。白石がバイトしてる事、学校にバラしてもいいの?」


「えぇっ?」


弱みに付け込む悪い俺。


「そ、それは困るんですけど」


「だったら、ちゃんと家まで送らせてよ」


俺の言葉に黙り込む白石。


深いため息が背中から聞こえて来た。


「ここを真っ直ぐ行ってください。

クリーニング屋さんが見えたら、右に曲がってください」


「ん、わかった」


俺は言われた通り、自転車を走らせた。


閑静な住宅街……と言えばそうなのかもしれないけど、なんだか妙に寂しい通りだ。


クリーニング屋が見えたから、右折する。


「真っ直ぐでいいの?」


「小さな公園があるので、そこまで行ってください」


しばらく行くと、白石の言う通り小さな公園が見えた。


「で?」


「えと……。そのすぐ裏です……」


そう言って、白石が指差すのは。
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